3月のライオン漫画第2巻に出てくる将棋用語や戦法とその心情 - 『穴熊』『美濃囲い』-
2016/12/07
この記事では、将棋を詳しく知らない人が『3月のライオン』をより楽しんでもらうための記事です。
作中に出てくる将棋用語や戦法を調べて、それがストーリーの中で何を示唆しているのかなど紹介したいと思います。
細かい戦略については3月のライオンの分かりやすい戦法の範疇を越えますので割愛します。
将棋の基本ルールはこちら→初心者のための将棋ルール
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桐山零(以下零)「 (1二香!? え?何?? やっぱり穴熊なの?) 」
-中略-(対局シーン)
零「(読めない━━ 何だコレ!? きっとなんか策があるんだよね?)」
-中略-(対局シーン)
零「(で 3二銀!? 今度は美濃囲いに!?)」
3月のライオン第2巻 -121.122P-
零と松永が対局しているシーンです。
穴熊から美濃囲いに急きょ作戦変更しだしました。かと思えば、零の攻めの対策もしていない様子。
松永はベテランならではのかく乱作戦なのか、それともただの行き当たりばったりなのか、分からない打ち方で零を混乱させています。
このシーンでは2つの戦法が出てきましたね。『穴熊』と『美濃囲い』
それぞれ解説したいと思います。
目次
3月のライオン第2巻『穴熊囲い』
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/穴熊囲い
囲いというのは、守備の陣形をさします。
穴熊囲いは、将棋の中で最も守備が堅いと言われる陣形です。
居飛車でも振飛車でもよく使われるオーソドックスな戦法です。
端にある香車を前に動かし、その後ろに玉を移動させます。その玉を金や銀で囲う形が『穴熊囲い』です。
まるで熊が穴蔵に潜るような様子からそう呼ばれているようですね。
穴熊囲いのメリット
- 金や銀が連結して密集しているため非常に守りが硬い。
- 玉が戦場から一番遠い位置にいるため王手が非常にかかりづらい。
- 攻め手側が、駒を渡すことなく穴熊を攻略することが難しい。
- 囲った側は、飛車や角(大駒)を捨て駒にするなどの大胆な作戦に出ることができる。
穴熊囲いのデメリット
- 穴熊囲い多くの手数が必要となるため、その前に攻撃を仕掛けられることが多い。
- 駒が一つの場所に集中しているため、自陣に隙が多くなり、攻め手は駒を打ち込みやすくなる。
- 横からの攻撃には強いが、上や端からの攻撃には比較的弱い。
- 端にいる玉の身動きが取れなくなり逃げ場が無くなる。
- 入玉(相手陣内に玉または王が侵入すること)される可能性が高くなり、必然的に勝利が困難となる。(なぜ勝利が困難となるかは割愛)
因みに、穴熊が崩されていない状態で投了(負けを宣言すること)した場合には『(穴熊の)姿焼き』と呼ばれています。美味しく頂かれないように気を付けないとですね!
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3月のライオン第2巻『美濃囲い(みのがこい)』
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/美濃囲い
こちらも囲い(守備の陣形)ですね。
穴熊囲いが居飛車・振り飛車問わず採用されるのに対して、美濃囲いは振飛車戦法で用いられる戦い方です。
先手でいえば玉将を2八の位置に、右の銀将を3八の位置に、左の金将を5八の位置に動かして作ります。
美濃囲いのメリット
- 横からの攻めに強いため、居飛車に対して有効。
- 少ない手で囲うことができるため、初心者でも囲いやすく、急戦(展開が早いこと)に対応することができる。
- 持久戦(展開が遅いこと)では、高美濃、銀冠と呼ばれる発展形に組み替えることができ、守りを固めやすい。
美濃囲いのデメリット
- 上や端からの攻めに弱い。
- 玉の位置をカバーする駒がないため、上部を破られると守り(受け)が弱くなる。
美濃囲いは様々な派生形がありますが、第2巻に登場しませんので割愛!
打ち方からわかる心情(少々ネタバレあり)
零とよぼよぼおじいちゃん(松永正一さん)との昇段をかけた対局が始まり、将棋の大先輩の見事な(?)攪乱作戦で零を惑わしました。
対局中には、その一手に対してどれだけ深読み、先読み、対策を考えられるかで勝敗が決まるんですよね。
松永さんは、将棋界史上5人目の中学生プロとどのように戦うのか。
松永さんは、勝てる相手ではないと悟っていました。どのように負けようかとも考えていました。
それでも心の奥底に眠る『負けたくない』という気持ち。
勝てないけれど負けたくもない。そんな揺れ動く心情を、定まらない囲い方で表現したのだと思います。
やはり将棋の対局シーンは絵的な動きが少なく、感情表現が難しいと思います。
なので、こういった将棋の打ち方で登場人物の感情表現をしているようですね。
とはいっても、それじゃあ漫画の面白みが無くなってしまいますから、
羽海野チカさんの作風は、表情の変化を分かりやすく描いています。松永さんの表情に注目です(笑)
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